研究課題
平成24年度は、1)不確実性下の意思決定プロセスの個人差要因の検討、2)不確実性への選好と社会的分配場面におけるマキシミニ選好との関連に関する検討を行った。まず、不確実性下の意思決定プロセスの個人差要因の検討として、前年度までに行った実験課題をさらに展開し、不確実性下の意思決定プロセスに関する個人差要因はいかなる心理・神経的基盤にもとづいているのかを明らかにすべく、複数の実験室実験および調査研究を行った。これらの実証的検討の結果、大多数の人々が客観的確率が不明な状況における不確実性(ナイト流不確実性)を避けると同時に、リスク(確率が所与の状況)における分散を忌避する傾向を示し、概念レベルでは異なるナイト流不確実性とリスクというエレメントが心理・神経的には同一の基盤に基づいて判断されている可能性があることが示唆された。次に不確実性への選好と社会的分配場面におけるマキシミニ選好との関連に関する検討として、人々の不平等回避傾向モデルとロールズ型のマキシミニ選好との関連を検討するための実験室実験を実施した。これらの一連の実証研究の結果、これまで最もよく用いられているFehr-Schmidt型の不平等回避モデルでは、(1)自身よりも取り分が多い他者が存在することの不効用と、(2)自身よりも取り分が少ない他者が存在することの不効用という2つの要素から人々の不平等回避傾傾向をとらえているが、最後通牒ゲームといった特殊なバーゲニング場面を除けば、ほぼ多くの場面で(2)のみによって人々の行動が記述可能であることが明らかになった。さらに、実験室実験における行動のパターンおよびfMRIを用いた実験の結果、上述の(2)の要素はロールズ型のマキシミニ選好の一環としてとらえられることが明らかになった。これらの一連の研究結果、学術論文に掲載されると同時に、さらに数篇の論文を投稿中である。
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