S=1/2カゴメ格子反強磁性体volborthite(Cu_3V_2O_7(OH)_2・2H_2O)のNMR測定及び、単結晶育成を行った。NMR測定は東京大学物性研究所の瀧川仁教授との共同研究として行った。その結果、遅い揺らぎを有していたI相から第一の磁化ステップ(H=4.3T)を経てII相へ移行するとともに、遅い揺らぎと早い揺らぎの二成分を有する相へ変化する事が明らかとなった。またII相におけるこの遅い揺らぎと早い揺らぎの成分は体積比として一対一である事が明らかとなった。この結果は、S=1/2カゴメ格子反強磁性体volborthiteにおいて、揺らぎの強い特異な基底状態(I相)が実現しているのみならず、より高磁場のII相においても慣例的な磁気秩序が生じている訳ではなくて、何らかの異常な磁気状態が実現している事を示しており、強い幾何学的フラストレーションが重要な役割を果たした状態である事が明らかとなった。また、volborthiteの単結晶の育成に成功した。今後結晶を用いた物性測定を行うことにより、より詳細な磁化ステップのメカニズムが明らかになると期待される。 また、本研究のテーマである幾何学的フラストレーションを有する関連物質の開拓を行った。その過程で三角格子反強磁性体Ag_2FeO_2及びAg_2CrO_2の合成に成功し、磁性を調べいくつかの学会において発表を行った。
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