研究概要 |
雨天時は,降雨等による環境の変化によって,視覚障害者が危険に晒されている.特に,雨天時は,降雨時に発生する"傘の雨滴衝撃音"によって視覚障害者が普段利用している聴覚情報の利用が妨げられており,道路横断時の自動車接触事故経験を示す視覚障害者が多い等,生命に関わる重要な問題であり,解決策の提案は急務である.本研究では雨天時の視覚障害者の歩行の安全を確保するために降雨騒音低減傘の開発,検証実験と評価指標の検討,視覚障害者用補聴器の開発,法制の整備を行う.視覚障害者のニーズを配慮した雨天時の歩行環境整備として,1~3の整備を行った. 1.降雨騒音低減傘の開発/検証実験と評価指標の検討(概要:これまで,降雨騒音低減傘のための基礎的検討を行ってきたが,これらの知見を踏まえ,実用化に向けて制振対策と効果の確認(目標値への追従性等),物性値の測定を行う.また,視覚障害者によるユーザビリティに関する検証実験は大変重要である)本年度は,特許修正,製品化へ向けた傘の軽量化,降雨騒音レベル測定,評価実験を実施した. 2.視覚障害者用補聴器の開発(概要:高度技術支援システム等の新たなデバイスを用いた福祉機器による移動支援を望む視覚障害者のために,視覚障害者用補聴器の開発と提案を行う。雨天時に,傘の雨滴衝撃音等の降雨騒音にマスキングされずに,必要な聴覚情報を聞き取り易くするための補聴器の開発と補聴器のフィッティングである.このような新たなデバイスを開発及び発信していくことは重要である)本年度は,デバイス開発にむけて企業とのテクニカルディスカッション,マスキング計算モデルの構築を行った. さらに, 3.視覚障害者用聴覚情報に係る法制の整備と工業規格化,国際標準化(概要:わが国における視覚障害者支援に関する法制では,雨天時等の環境変化に応じた整備指針がないことが問題の一つである。雨天時の歩行は視覚障害者にとって危険であることから,法制の整備や視覚障害者用サイン音の設置・運用に関する標準化は重要な課題である) 本年度は法整備のためのデータ収集を実施した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進展しているが,昨年の3月11日の災害を受けて,視覚障害者の支援に必要な課題がさらに追加されたため,災害時の悪天候時の視覚障害者の音環境整備にも着手した.しかしながら,災害を受けて実験に遅れが発生した.節電や被験者の都合等により実験可能となったのが秋ごろだった.
|