研究課題/領域番号 |
10J10472
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野尻 明宏 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 構造変化 / アゾベンゼン / ペプチド / 触媒 |
研究概要 |
私は、複数のコンフォメーションの随意制御が可能な不斉触媒を設計し、適時機能変化能を有する不斉触媒の開発を目指して研究に取り組んでいる。現在は溶解性を制御することによって機能を調整することのできる触媒開発を目指している。 昨年度、アゾベンゼン基を導入したジアミドがアゾベンゼンの光異性化により凝集と解離が可逆的に起こることを見出した。アゾベンゼンがトランス体の時に凝集現象が見られ、シス体の時に溶解することがわかっていた。今年度、トランス体の時に得られた凝集体の単結晶のX線構造解析に成功し、凝集の際にジアミド部位が水素結合ネットワークを形成しているのに加えて、アゾベンゼン同士のπ-π相互作用が安定化に重要な寄与を示していることが分かった。この結果から、トランス体の時はπ-π相互作用により凝集し、シス体では、π-π相互作用による安定化効果がなくなるために凝集現象が見られなくなっていると推測された。また、凝集現象において沈殿の割合をHPLC分析によって解析することによって繰り返し凝集/解離を繰り返すサイクルにおいて定量的な評価をすることが可能になり論文投稿することができた。 また、ジアミド体にピリジン部位を導入することによって光によって自在に溶解性をコントロールできる窒素を求核的な触媒の合成に成功した。触媒をフェノールのBo c化反応において評価したところ不溶性の触媒と、溶解している触媒では優位に反応速度の違いが見られることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、溶解性によって触媒反応性を制御するという独自の反応機構制御能を獲得に成功した。この結果は、研究の目的を達成するための大変重要な一歩となった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、触媒の反応性を、溶解性を制御することで触媒機能をON/OFFすることが可能になった。現在は溶解性を変化させるシステムを拡張して、全く異なる触媒機能を自在に制御し発揮することのできる触媒の開発を目指している。
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