研究概要 |
本研究は薬剤キャリアーを目的組織、細胞に送達させる標的化DDSの逆バージョンとして、目的の細胞に薬剤を認識させる逆標的化DDS(Reverse Targeting DDS,RT-DDS)という新たな独創的なコンセプトにより、免疫疾患治療への応用を目的としている。siRNAデリバリーは、本研究室にて開発されたポリカチオン脂質dicetyl phosphate-tetraethylenepentamine(DCP-TEPA)を基盤としたポリカチオンリポソーム(TEPA-PCL)を用いた。リポソームの組成はDipalmitoyl phophatidyl choline(DPPC):Dioleolyphosphatidy lethanolamine(DOPE):Cholesterol(Cho):DCP-TEPA=0.75:1:1:0.25となるように混合し、調製した。初めに、TEPA-PCLを調製後、siRNAをNitrogen/Phosphate=24となるようにリポソーム表面に搭載させた。生体内での安定性確保のためにはポリエチレングリコール(PEG)を、抗原である卵白アルブミン(OVA)はPEG-maleimideとOVAを反応させた後(OVA-PEG)に修飾した。 その結果、新規キャリアーであるOVA-PCL/siRNAは、サイズが約130nm、表面電位は-14mVであり、RT-DDSのためのリポソーム調製に成功した。次に、OVA-PCL/siRNAの血清中での安定性を試験するために、50%FBS中にて24時間インキュベートし、OVA-PCL/siRNAのサイズζ電荷を測定した。その結果、50%FBS中においてもサイズ、ζ電位に変化は見られず、安定に存在することが明らかになった。以上の結果より、本研究によって開発した新規キャリアーovA-PcL/siRNAは、血清中においても安定なキャリアーであることが明らかになった。本研究は、現在基礎的な研究を行っている段階であり、進歩のスピードは決して速くはない。しかし、siRNAのベクター開発や、生体内での安定性試験などの基礎検討は今後の治療実験に向けて基盤となる研究でり欠かせない研究である。
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