研究概要 |
筆者は、これまでに安定なヘリックスをとる(S, S)-2-Aminocyclopentanecarboxylic acid (ACPC)からなる12merのβペプチド(S-12)が強いγセクレターゼ阻害活性を示すことを明らかにしている。さらに活性の高いβペプチドの開発およびγセクレターゼが基質をどのように認識しているかを明らかにする目的で研究を進めている。 そこで、S-12の一部を側鎖官能基を有するβアミノ酸に置換したβペプチドを合成した。まず、S-12のどの部位が認識に重要かが明らかになっていないため、N末から3、6、9番目のアミノ酸残基をそれぞれトレオニン、セリン、グルタミン、アスパラギン、チロシン、グルタミン酸、リシン、ロイシンと同様の側鎖を有するβアミノ酸に置換したβペプチドを合成した。モノマーであるFmoc-βアミノ酸はそれぞれ対応側鎖を有するαアミノ酸からArndt-Eistert合成を用いて合成した。合成したモノマーを用いてFmoc固相合成により目的のβペプチドを合成し、HPLCを用いて精製を行った。目的物ができているかはMALDI-MSを用いて分子量を測定し、それぞれ目的物ができていることが確認された。合成したβペプチドの阻害活性を測定したところ、3番目を置換したものはS-12と同程度かそれ以上の活性を示したのに対し、6,9番目を置換したものはすべて阻害活性が低下した。そのため、N末から3番目のアミノ酸残基が阻害活性には重要であることが明らかとなった。この結果はいまだ明らかになっていないγセクレターゼの基質認識部位の構造に関して新たな知見を与えるものである。
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