研究概要 |
筆者は、これまでに安定なヘリックスをとる(S,S)-2-Aminocyclopentanecarboxylic acid(ACPC)からなる12 merのβペプチド(S-12)が強いγセクレターゼ阻害活性を示すことを明らかにしている。さらに活性の高いβペプチドの開発およびγセクレターゼが基質をどのように認識しているかを明らかにする目的で研究を進めた。これまでの結果から、N末から3番目のアミノ酸残基が重要であることが明らかとなったため、N末から3番目のアミノ酸残基を様々なβアミノ酸に置換した誘導体を合成し、阻害活性を評価した。その結果、S-12と比べ10倍程度高い阻害活性を示すものを見出した。そして、側鎖がコンパクトなものが活性が高いことが明らかとなり、γセクレターゼはコンパクトな側鎖を認識しやすいことが示唆された。また、非天然の側鎖を有するβアミノ酸の合成をスイス連邦工科大学チューリッヒ校のJefferey Bode教授のもとで行った。今後非天然の側鎖を有するβアミノ酸に置換した誘導体を用いることでさらに活性の高い阻害剤を見出すことができる可能性があるため、非天然の側鎖を含んだ阻害剤を合成する予定である。また、低分子のヘリックスミミックを用いた阻害剤の開発にも着手した。疎水性のアミノ酸残基からなるβペプチドで強い阻害活性を示していたため、γセクレターゼはペプチドの疎水性の面を認識していると考え、疎水性の面を形成するヘリックスミミックをデザインした。骨格はこれまでにヘリックスミミックとなることが報告されているベンゾイルウレアを用い、側鎖は疎水性の高いイソブチル基を導入したものを合成した。阻害活性を検討したが、低分子ヘリックスミミックでは全く阻害活性を示さなかった。この結果から、γセクレターゼが単純に一つの疎水性の面のみを認識しているわけではないことが示唆された。
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