研究課題/領域番号 |
10J10659
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
市川 裕樹 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ケミカルバイオロジー / 光増感剤 / 光線力学療法(PDT) |
研究概要 |
【目的】 光増感剤とは光照射によって一重項酸素(^1O_2)を生成し、取り込んだ細胞・組織へ酸化ストレスを与えることができる化合物であり、医療現場でも光線力学療法(PDT)の薬剤としてがん治療などに使用されている。昨年度までの年会で我々はspiro環の開環・閉環を制御原理としたactivatable光増感剤2I HMTG galを開発し、光照射を行うことによってレポーター酵素であるβ-galactosidaseを発現した細胞のみを細胞死に導くことができることを報告した。この開環・閉環による光増感能の制御は極めて有効な手法であることが明らかとなったため、この制御原理を応用してがんに過剰発現している酵素をターゲットとした光増感剤を設計し、がん細胞のみを選択的に細胞死に導くPDTを目指して研究を行った。 【方法・結果】 標的酵素として卵巣がん等で過剰発現が知られるγ-glutamyltranspeptidase(GGT)を選択した。Rhodamineのxanthene環の0原子をSe原子に置換したSeRhodamineは高い^1O_2生成能を有することが知られており、光増感剤の母格として選択してactivatable光増感剤SeRGluを開発した。SeRGluは閉環構造をとっており可視光吸収が無いために光像感能を示さないが、GGTとの酵素反応によってspiro環が開環、可視光吸収が回復するため、光照射によって102を生成するようになる。この新規光増感剤を培養細胞に用いてPDT実験を行ったところ、GGT活性が高い細胞種ほど効率的に細胞死を導くことができることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん細胞選択的なPDTを実現するにあたって極めて有効な光増感剤の制御法を一般化し、がん細胞に対するターゲティングを可能にした。この成果は今後の展開に極めて重要なステップであり、計画が順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は開発した光増感剤をin vivoへと応用し、がん細胞選択的なPDTの実現を目指す。具体的には腹膜播種、または膀胱がんのモデルマウスに対して光増感剤を投与し、がん細胞の死滅および正常組織に対する毒性の少なさを示す予定である。
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