研究課題/領域番号 |
10J10697
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
吉本 真 公益財団法人がん研究会, がん研究所がん生物部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 細胞老化 / Stem Cell Aging / 細胞老化イメージングマウス |
研究概要 |
本研究は、"組織幹細胞の老化(Stem Cell Aging)"及び癌抑制機構である"細胞老化"について、細胞老化誘導に重要なp.16^<INK4a>遺伝子の発現をモニターするイメージングマウスを用いることにより、加齢に伴う組織幹細胞の老化や、様々な発がんストレスに対するがん幹細胞の発生などの分子機構を明らかにすることを目的とする。 昨年度までに、高齢マウスの精巣における精細胞の前駆細胞においてp16^<INK4a>遺伝子発現上昇を伴う細胞老化が生じることを確認した。平成24年度は、p16^<INK4a>遺伝子の精巣におけるStemCellAgingへの関与とその役割についてさらに明らかにするために精巣の再生実験を行った。p16^<INK4a>遺伝子が精巣の精子前駆細胞の増殖を制御する重要な因子であるなら、p16^<INK4a>遺伝子を欠損したマウスの精巣では再生実験において精子前駆細胞の増殖がWTマウスよりも活発になり、成熟精細胞の再生が盛んになるのではないかと考えられた。そこで、WTマウスとp16^<INK4a>遺伝子を欠損したマウスにBusulfanという精巣の精子幹細胞に特異的にアポトーシスを誘導する試薬をマウスに投与し、35日後、70日後に精子前駆細胞数や精子数を調べた。35日後の精子数はp16^<INK4a>ノックアウトマウスの方が野生型よりも多く認められたものの、興味深いことに70日後にはp16^<INK4a>ノックアウトマウスの精子数は野生型よりも減少していた。これらの結果から、,p16^<INK4a>遺伝子が欠損していると、短期的には増殖した前駆細胞が供給され精子が数多く産生されるが、長期的には精子が枯渇傾向になることが明らかになり、精巣におけるp16^<INK4a>の発現は精子の枯渇を防ぐ働きもあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、"細胞老化"について、細胞老化のイメージングマウスを用いることにより、加齢に伴う組織幹細胞の老化や、発がんストレスに対するがん幹細胞の発生などの分子機構を明らかにすることを目的とする。これまでに精巣の精子幹細胞におけるStem Cell Agingにp16^<INK4a>遺伝子が関与することを強く示唆する結果が得られている。さらに、p16^<INK4a>遺伝子は精子幹細胞の枯渇を防ぐ働きがあるという新しい知見を得ることができ、当初の計画以上の発展を見せていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、精子幹細胞における細胞老化の誘導機構を分子的に明らかにする予定である。具体的には、加齢マウスや精子幹細胞の培養細胞などを用いてマイクロアレイ解析を行い、細胞老化を誘導する因子をエピジェネティックな因子も含めて網羅的に解析する。また精巣以外にもターンオーバーが早い小腸などの組織についてもp16^<INK4a>遺伝子が関与している可能性があるので調べる予定である。
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