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2012 年度 実績報告書

解剖生理学と行動学を併用した害虫消化管内に寄生するヤドリバエの環境適応機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 10J40049
研究機関独立行政法人国際農林水産業研究センター

研究代表者

田端 良子 (一木 良子)  独立行政法人国際農林水産業研究センター, 生産環境・畜産領域, 特別研究員(RPD)

キーワード捕食寄生性昆虫 / ヤドリバエ / 中腸 / 内部寄生 / 害虫防除 / 天敵
研究概要

ノコギリハリバエは農業害虫に寄生して成長する捕食寄生性天敵であり、有望な生物的防除資材としてその効果が期待される。他の内部寄生性昆虫の大半が寄主の消化管と表皮の間隙(体腔)に寄生するのに対し、本種の幼虫は寄主昆虫の消化管(中腸)内に寄生するというユニークな生態をもつ。体腔には生体防御を担う原白血球や顆粒細胞等多数の血球細胞が存在するので、これらを回避するために中腸という非常に特殊かつ極限的な寄生環境に適応したものと考えられる。また、寄主の中腸内は嫌気的に保たれているので、呼吸のための酸素獲得が困難となるが、ノコギリハリバエの幼虫は寄主の気管を中腸内に取り込み、これをあたかもシュノーケルのようにして呼吸していることを発見した。本研究の目的は、ノコギリハリバエが中腸という特殊な環境にどのように適応しているのか、そのメカニズムについて解明するとともに、ハエ幼虫が気管の場所を感知し、中腸に取り込むメカニズムについて明らかにすることである。中腸という特殊な場所に寄生するには、1)呼吸のための酸素の確保、2)強アルカリ環境への耐性、3)消化酵素への耐性、4)寄主の食草に含まれる毒性分子や防御物質への耐性、のようなハードルがあると考えられる。前述したとおり、1)についてはノコギリハリバエの幼虫はシュノーケル呼吸によりこれを克服していることを既に明らかにした。今年度は2)および3)を検証する生理学的実験を継続して行った。ハエ幼虫が一定期間生存することができる人工培地を使って、ハエ幼虫のpH耐性および消化酵素への耐性を試験したところ、現在までのところノコギリハリバエは強アルカリに一定の耐性を持つ可能性が高いことや、一部の消化酵素へ耐性を持つ可能性を示す結果が得られた。4)についてはすでにデータを取り終えており、研究結果を学術論文として発表する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ノコギリハリバエが強アルカリに一定の耐性を持つ可能性が高いことや、一部の消化酵素へ耐性を持つ可能性を示す結果が得られており、中腸という特殊な環境に適応するメカニズムの一端が解明できつつある。

今後の研究の推進方策

ノコギリハリバエの幼虫が寄主の気管の場所を感知し中腸に取り組むメカニズムについて、行動学的に明らかにする。そのためには、光量、温度、培地の堅さ等の条件を精査し、ハエ幼虫の行動や選好性をより自然な状態で測定できる生物検定法を確立する必要がある。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Different uses of plant semiochemicals in host location strategies of the two tachinid parasitoids2013

    • 著者名/発表者名
      Ichiki RT, Ho GTT, Wajnberg E, Kainoh Y, Tabata J, Nakamura S
    • 雑誌名

      N aturwissenschaften

      巻: 99 ページ: 687-694

    • DOI

      10.1007/s00114-012-0950-0

    • 査読あり
  • [学会発表] クモヘリカメムシに寄生するヤドリバエの発育2013

    • 著者名/発表者名
      一木良子, 山下賢一, 中村達
    • 学会等名
      第57回日本応用動物昆虫学会
    • 発表場所
      日本大学(神奈川)
    • 年月日
      2013-03-28
  • [学会発表] カリヤコマュバチにおける寄主の餌の違いによる寄生成功率への影響2013

    • 著者名/発表者名
      藏滿司夢, 一木良子, 中村達, 戒能洋一
    • 学会等名
      第57回日本応用動物昆虫学会
    • 発表場所
      日本大学(神奈川)
    • 年月日
      2013-03-28
  • [学会発表] Food plants of host caterpillars affect development of the parasitoid fly Compsilura conicinnata (Diptera : Tachinidae)2013

    • 著者名/発表者名
      Ichiki RT, Tabata J, Nakahara Y, Kainoh Y, Nakamura S
    • 学会等名
      4^<th> International Symposium on Biological Control of Arthropods
    • 発表場所
      Pucon, Chile
    • 年月日
      2013-03-05
  • [学会発表] 中腸に寄生するノコギリハリバエの発育に対する寄主食草の影響2012

    • 著者名/発表者名
      一木良子, 田端純, 中原雄一, 戒能洋一, 中村達
    • 学会等名
      日本昆虫学会第72回大会
    • 発表場所
      玉川大学(東京)
    • 年月日
      2012-09-16
  • [学会発表] Different uses of plant semiochemicals in host location strategies of two "microtype" parasitoid flies2012

    • 著者名/発表者名
      Ichiki RT, Giang HTT, Kainoh Y, Wajnberg E, Nakamura S
    • 学会等名
      XXIV International Congress of Entomology
    • 発表場所
      Daegu, Korea
    • 年月日
      2012-08-22
  • [図書] Chemical ecology of tachinid parasitoids. Wajnberg E and Colazza S. (eds.), Recent Advances in Chemical Ecology of Insect Parasitoids2013

    • 著者名/発表者名
      Nakamura S, Ichiki RT, Kainoh Y
    • 総ページ数
      328
    • 出版者
      Wiley-Blackwell

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公開日: 2014-07-16  

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