2007-2008年に南極で取得されたデータを用いたIceCube実験初となる超高エネルギー宇宙ニュートリノ探索結果を論文として出版するとともに、2008-2009年度データの解析を完成させ、この結果をまとめた論文を投稿した。全IceCube検出器のうち、2008年までに完成していた半数の光電子増倍管を用いた2008-2009年度データを用いた解析からは、IceCube実験が世界にある超高エネルギーニュートリノ実験の中でも、現時点で、最も感度の良い実験であることを示すことができた。これは2011年から始まる全検出器を用いた超高エネルギーニュートリノ探査においては毎年一事象以上が期待できることも示した。この研究に対する不定性としてあげられる、南極氷河中の光子の伝搬に対する不定性を、様々な氷のプロファイルモデルを使って調べた。 2011年11月から始まる、IceCube実験の将来の拡張として、電波領域に延びていることが知られているチェレンコフ放射を捕らえるARA実験の準備研究として、無線データ転送システムのプロトタイプ研究を行った。南極には他に電波望遠鏡があるため、他実験に与える影響を最小限にしたうえ、最も信頼度の高い構成を構築した。他実験への干渉問題は、指向性の高い高利得アンテナを用い、受信感度を上げることで解決できることが分かった。
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