研究概要 |
PRIPは、我々の研究室で新奇のIns(1,4,5)P_3結合性タンパク質として見いだされた分子である。その後の研究から、PRIPはGAGA_A受容体の形質膜発現量を調節する分子基盤の重要な一翼を担うことが明らかになった。PRIPノックアウトマウス(PRIP-KO)を解析する過程で、雌では加齢に伴う体重の増加がみられたものの、雄ではその体重増加が小さく、やせていることに気がついた。肥満は、過食とエネルギー消費の低下が大きな要因である。摂食やエネルギー代謝活動は、脳の視床下部にある中枢で調節されており、GAGA、A受容体を会するシグナル伝達もそこに関与していることが明らかになっている。これらの事実は、PRIPが摂食調節機構やエネルギー代謝調節機構に関わっていること、またその調節過程の一部が雌雄間で異なることを示唆している。このPRIP分子の、摂食・エネルギー代謝への関わりについて、下記を明らかにした。 1)10週及び20週のマウスの体重は、雄でPRIP-KOマウスが有意に小さかった。一方、雌の体重は野生型と有意な差を認めなかった。 2)摂食量は雄、雌ともに野生型とPRIP-KOマウス間で有意な差を認められなかった。 3)血中レプチン濃度は野生型とPRIP-KOマウスで差は認められなかったが、血中アディポネクチン濃度はPRIP-KOマウスで減少していた。血中インスリン濃度は雌雄共に増加していた。 4)褐色脂肪組織においてエネルギー源をATPを経ずに直接熱エネルギーに変換する働きをもつUCP-1の発現は、PRIP KOにおいて増加していた。 以上のことに加えて、PRIP-KOマウスの脂質代謝異常やインスリンシグナリングの異常を示唆する顕著なデータも得られている。
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