肥満は、過食とエネルギー消費の低下が大きな要因である。摂食やエネルギー代謝活動は、脳の視床下部にある摂食中枢(視床下部外側野)と満腹中枢(視床下部腹内側核)によって調節されている。その機構の中で、GABA_A受容体の形質膜発現量を調節する分子基盤の重要な一翼を担うPRIPは摂食・エネルギー調節制御の鍵となる可能性がある分子である。 近年、骨由来ホルモンである低(無)カルボキシル化オステオカルシン(GluOC)が全身の糖・エネルギー代謝を活性化するとして注目を集めている。メスのPRIP-KOマウスにおいて、骨量の増加とそれに伴う血中GluOC量の増加が認められた。そこで、PRIP-KOマウスに対してグルコース負荷試験及びインスリン負荷試験を行ったところ、メスで空腹時血糖の低下、耐糖能の改善、及びインスリン感受性の増加が認められた。 野生型マウス(3週齢)に10週間継続的にOCを経口投与したところ、オスでは特段の変化が見られなかったが、メスでPRIP-KOと同様に空腹時血糖の低下、耐糖能の改善傾向が認められた。また、膵臓ラ氏島の面積の増加、小型脂肪細胞の増加も観察された。しかし、体重、摂食量、骨の状態、インスリン抵抗性に変化は認められなかった。PRIP-KOマウスに同様にGluOCを継続投与して同様の解析を行うと、オス・メスともにGtuOCの効果は認められなかった。 以上のことから、PRIPはGluOCが代謝改善効果を発揮する際に必須であることが示唆される。一方、PRIP-KOでも糖代謝の改善がみとめられることから、PRIPにはGluOCを介さずに糖代謝を調節する経路もあると考えられる。
|