研究課題/領域番号 |
10J40105
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
長崎 玲子 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 特別研究員(RPD)
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キーワード | 細胞運動 / トランスフェクションマイクロアレイ / 時系列解析 / 癌細胞 |
研究概要 |
細胞運動は、器官形成や免疫担当細胞の遊走・損傷治癒などにおいて重要な役割を担うだけでなく、悪性化した癌細胞の浸潤にもその関与が示唆されている。しかしながら、細胞運動の制御過程は非常に複雑であるため未だ断片的な知識しか得られていないのが現状である。そこで本研究では、独自の技術である細胞運動評価チップを用いて全キナーゼ及び関連因子群から細胞運動を調節する物をスクリーニングし、さらにデータ取得済みの細胞外マトリックス依存的に発現誘導を受ける遺伝子情報とその結果の統合を目指す。これによって、転写レベルのECM依存的発現誘導からがんの悪性度を左右する細胞運動調節キナーゼの活性化にいたる一連の作用機序について解析できるものと考えている。 昨年度までに、TypeIコラーゲンコートしたディッシュ上をラット膀胱がん由来細胞NBT-L2b細胞が運動する際に必要と思われる31遺伝子を絞り込んだ。本年度は、この情報をもとにクローニングされた29遺伝子の細胞内局在を検討した結果、2遺伝子が核に、4遺伝子が核と細胞質、3遺伝子が細胞膜、1遺伝子が小胞、1遺伝子が骨格、1遺伝子が細胞質と細胞膜、1遺伝子がミトコンドリア、15遺伝子が細胞質に局在した(1遺伝子は発現がほとんど認められなかった)。さらに絞り込まれた遺伝子群の結果を次世代シークエンシングによるECM依存的に発現変動する遺伝子群と照会したところ、3遺伝子が重複した。3遺伝子のうち1つは上述の核に局在した遺伝子であり、論文情報によると転写因子であるSMAD3と相互作用することが報告されていた。さらに、L2bの亜種であり、コラーゲン依存的に細胞運動をしないT1細胞とL2b細胞の間で絞り込まれた遺伝子の発現量を比較したところ、L2b細胞での発現が4遺伝子について高く、うち1遺伝子は上述のECM依存的に発現が昂進するものであった。以上の結果より、スクリーニングにより興味深い遺伝子が絞り込まれていたことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
被災に伴う特別研究員採用中断を行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、重複した3遺伝子を中心にがんの悪性度との関連、転写調節機構、さらに接着斑や仮足形成にどのような影響をもたらすのか、分子生物学・イメージングの手法を中心に明らかにする予定である。
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