研究課題
本研究では、環状チアジルバイラジカルBDTDA薄膜の光伝導を機構解明および特性の向上を目指し、π共役系で拡張した新規化合物2種類を合成し、その結晶構造および電子構造を明らかにした。ITO|BDTDA類縁体(300nm)|Alなるサンドイッチセルを作製し光照射したが、光伝導性を示さなかった。これは、BDTDAは高配向性の結晶膜であるのに対し、類縁体はアモルファスであったことが理由としてあげられる。今後は膜の質の向上を行う。一方、別の環状チアジルバイラジカルNTを用いて同様のサンドイッチセルを作製したところ結晶性薄膜が得られた。強度1.59mWcm^<-2>の緑色レーザー(532nm)をITO側から光照射したところ、定常状態に達する前に、巨大過渡電流を見出した。その強度はBDTDAに及ばないものの同様の現象が起きたことは、機構解明に大きな知見を与えると考えられる。また、オールオプトデバイス(光回路)実現に向けて、環状チアジルラジカルの光物性を調べるために、くし型電極上にNTを蒸着したセルを作製し、第三高調波発生法によって三次の非線形感受率(X^<(3)>)を決定した。励起光0.56eVを用いた際のX^<(3)>は15.4×10^<-12>esuとなり、これは今までに報告されている有機分子性化合物の中で大きな値である。この理由として、NTは結晶中でチアジルラジカル化合物特有の分子間相互作用による多次元ネットワークを形成しているためと解釈した。
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Chem.Phys.Lett.
巻: 484 ページ: 177-180
http://www.chem.nagoya-u.ac.jp/awagak/