本研究では、イネの可食部、すなわち白米への重金属元素の移行経路を明らかにすることを大きな目標にしている。そして、特別研究員としての2年間の研究期間においては、近年世界的に規制が強化されている有毒元素・カドミウム(Cd)を主に扱うことを計画し、1年目の実験を行った。年度の前半では、複数の無機元素のイネ体内輸送の特徴を個々に把握することを目的とし、<32>^P、<35>^S、<45>^Caと<109>^Cdをそれぞれ吸収させたイネのイメージング解析を行った。その結果、Cdは他の元素と異なり、処理後短時間(30分以内)の輸送方向と処理後48h後のそれとがほぼ同様であることが示された。また、イメージング解析においては、現在広く使用されているMS-IPを個体レベルでの解析に用いる一方、組織レベルでの解析を目指し、TR-IP-トリチウム検出用に開発された、表面保護層のないIP-を、30μm厚の凍結切片に対してコンタクトさせた。TR-IPのイメージング解析結果は予想よりも格段に良く、<109>^Cdの維管束への集積と、葉肉組織への拡散を、画像として見分けることができるレベルであった。凍結切片とTR-IPという組み合わせにより、当初計画していた蛍光色素によるCdの組織レベルでの分布解析と同等かそれ以上の結果が今後得られると考えている。 また、イネ茎内のCdの移行経路を明らかにするために考案した「特定の冠根(R4)からのアイソトープの処理」という独自の手法も試行した。イメージング解析を可能にするには、既報に比べて高濃度のアイソトープを処理することが必要であることが分かった。そこで、200MBq/Lの<109>^Cdを30分間処理したところ、茎内のCdの移行経路を追跡することが可能となった。現在、1年目の研究結果をもとに投稿論文を準備中である。
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