研究課題
本研究は、経鼻免疫による膣粘膜免疫応答誘導・制御の機構を解明し、性感染症に対する経鼻粘膜ワクチン開発基盤形成に貢献することを目的として開始された。すなわち、世界的に罹患率が高く、脳炎などの重篤な症状を引き起こす可能性があり、HIVやヒトパピローマウイルス感染のコファクターである単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)を用いた感染マウスモデルを応用して、経鼻投与された抗原に対する特異的免疫応答が遠隔の粘膜組織である膣粘膜において誘導される現象の分子機構を明らかにするものである。平成22年度には、全く未解明であったHSV-2ワクチン株の経鼻免疫による膣枯粘膜免疫応答誘導・制御の機構について、主なエフェクター細胞はHSV-2抗原特異的メモリーCD4^+T細胞であることが明らかとなった。このメモリーCD4^+T細胞が膣粘膜組織局所に誘導されており、野生型HSV-2の経膣感染に対して速やかにIFNγを産生することによって防御免疫を成立させるという機構が示唆された。この際、全身性のメモリーCD4^+T細胞は必ずしも必要ではなく、膣粘膜組織における局所のメモリーCD4^+T細胞で充分であることも明らかとなった。膣粘膜組織へのエフェクター細胞の遊走機構は脂質メディエーターの一つであるスフィンゴシン1リン酸非依存的であること、ケモカインシグナルCXCL10/CXCR3が主要な機構の一つであることを明らかにした。さらに鼻腔粘膜所属リンパ節の一つである頸部リンパ節において、樹状細胞による抗原提示により膣粘膜指向性を獲得したエフェクターCD4^+T細胞が誘導され、その後エフェクターCD4^+T細胞が膣粘膜組織へと移動することを示唆する結果を得、生体内での防御免疫応答を担う各免疫担当細胞の挙動が明らかになった。
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