研究概要 |
当該年度では、半導体高分子ポリチオフェンの一部にフラーレンを連結したブロックコポリマーを合成した。従来この分子は、フラーレンとポリマーの連結反応で架橋反応などの副反応を誘発しやすく、結果として溶解度が著しく低下し、実際に光電変換素子に応用可能な分子を得た例はほとんどない。今回は合成法を最適化することにより副反応を抑制し、光電変換素子に応用可能な溶解度を持つ分子の合成に成功した。この分子が実際に非常に良く制御された分子であることをNMR,GPC、吸収スペクトル、蛍光スペクトルなどから確認した。次に、この分子の薄膜を作製した所、ドナー性のポリマードメインと、アクセプター性のフラーレンが連結されたポリマードメインが20nm程度に自発的にミクロ相分離した構造が得られることをAFMの位相像から確認した。そこで、実際にこの分子のみを用いて光電変換素子を作製した所、1.70%の光電変換効率が得られ、ドナー/アクセプター連結分子系における世界最高値が得られた。従来この系では、電荷輸送経路の構築が困難であり光電変換特性のフィルファクター(FF)が低下することが問題であったが、この分子ではFFが最高60を達成し効率的な電荷輸送のパスが構築されていることを示せた。さらに、この分子においては薄膜中の構造が自己組織化により安定化されているため、膜の相分離構造が熱的に安定であるという優位な点がある。実際に、単純なドナー/アクセプターの物理混合では熱処理によって膜の相分離構造が変化し、結果として光電変換効率が著しく劣化するが、この分子を用いた光電変換素子は、加速試験(130度3日間)においてもほとんど光電変換効率の劣化は見られず高い熱安定性を有していることがわかった。
|