今年度は下記の研究を行った。 (1)記憶ヘルパーT細胞を再活性化させる抗原提示細胞の同定 蛍光色素で標識した抗原をマウスに投与することで、生体内における抗原のトレーシングに成功した。その結果、二次免疫応答時にのみ骨髄への抗原の集積が観察され、その多くがMHC class II陰性の類胴内皮細胞に付着していることを発見した。また一部の抗原は、MHC class II陽性細胞の細胞表面に付着あるいは細胞内に取り込まれており、抗原を取り込んだMHC class II陽性細胞の大部分が成熟B細胞であることを明らかにした。二次免疫応答時における記憶ヘルパーT細胞への抗原提示は、樹状細胞などではなく成熟B細胞が主として働くことが考えられる。 (2)抗原提示細胞による記憶ヘルパーT細胞の再活性化のメカニズム 凍結切片免疫染色法を用いて、骨髄内の記憶ヘルパーT細胞は定常時にはIL-7産生ストローマ細胞に接着して存在していることを確認した。この記憶ヘルパーT細胞のマウス体内における再活性化時間の動態を、活性化マーカーかつ機能分子であるCD40Lの発現を指標にフローサイトメトリー法にて検出した。その結果、骨髄ヘルパーT細胞は脾臓ヘルパーT細胞よりとても素早く再活性化することが明らかとなった。さらに、多光子レーザー顕微鏡を用いた生体内イメージング法を立ち上げ、活性化ヘルパーT細胞の骨髄への移入、ならびに骨髄内への定着の様子の観察に成功した。今後はこの静止状態の記憶ヘルパーT細胞の再活性化の様子を観察していく。 以上のことより、二次免疫応答時における記憶ヘルパーT細胞の再活性化には、抗原提示能を持つ細胞が骨髄に多く存在することやそのT細胞自身の反応性が高いことなどの理由で、免疫システム全体の再活性化が迅速に行われるものと考え、現在更なる解析を行っている。
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