ショウジョウバエ生殖細胞特異的に発現しているArgonauteタンパク質Piwiは、Piwi-interacting RNA (piRNA)と呼ばれる小分子RNAと結合し、転移因子の抑制や遺伝子発現の調節を担っているが、piRNA生合成経路に関しては不明な点が多い。我々は、モノクローナル抗体とショウジョウバエ卵巣体細胞から確立された培養細胞OSCを用いてpiRNA生合成経路の解明を進めている。本年度は、遺伝学的解析からpiRNA生合成に必須であることがわかっていたArmitage(Armi)の生化学的解析を行い、以下の成果を得た。 1.OSCにおいてPiwiとArmiが相互作用すること、さらに、Armiと相互作用するタンパク質として新たにYbを同定した。RNAi法によりYb発現を抑制するとpiRNA生合成が阻害されることを示し、Ybが新規piRNA生合成因子であることを明らかにした。 2.ArmiはRNAヘリケースドメインを有することからRNAとの相互作用が予想された。Armiに結合するRNAを精製したところ30~75塩基長の、piRNA配列を内部に含むRNAを同定した。次世代シーケンス解析により、このRNAが作られる領域がpiRNAの生成領域と一致することを見いだし、これらがpiRNA中間体であることを示した。 3.Ybは細胞質顆粒構造体Yb-bodyを形成することが知られていたがその機能は不明であった。Ybに対するモノクローナル抗体を作製し細胞内局在解析を行った結果、ArmiがYb-bodyの構成因子であり、Yb-bodyにおいてPiwi、Armi、Ybが複合体を形成することがわかった。また、YbがpiRNA中間体形成に必須であることを見いだし、Yb-bodyがpiRNA生合成の場として機能していることを示した。
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