サブミリ波干渉計による惑星系形成領域の研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11101002
• 研究機関: 国立天文台
• 研究代表者: 川辺 良平 国立天文台, 電波天文学研究系, 教授 (10195141)
• 研究分担者: 鷹野 敏明 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (40183058) ; 北村 良実 宇宙科学研究所, 共通基礎研究系, 助教授 (30183792) ; 井田 茂 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60211736) ; 河野 孝太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80321587) ; 中村 良介 宇宙開発事業団, 研究員
• キーワード: サブミリ波 / 電波干渉計 / 惑星形成論 / 太陽系起源論 / 超伝導受信機

研究概要

太陽クラスの若い星のまわりでの原始惑星系円盤の形成・進化過程の観測的研究を、主に野辺山ミリ波干渉計を用いて行った。円盤形成の研究としては、代表的な原始星L1551 IRS5の周囲に形成途中の円盤を初めて検出することに成功した。円盤進化の研究としては、3年間にわたる長期共同利用観測の成果を論文にまとめIAU会議等で発表した。さらに、フォローアップ観測として野辺山レインボー干渉計を用いた円盤の高感度・高分解能観測も行った。
また、今シーズンは、装置トラブルに見舞われつつも、野辺山サブミリ波干渉計による円盤観測に挑戦した。サブミリ波干渉計による観測を進める上で、大気による位相の揺らぎが重大な障害になっていることが確認された。サブミリ波干渉計に搭載する受信機の改良が進展したほか、サブミリ波用偏波変換素子の開発が進んだ。すなわち、固体異方性媒質であるサファイアを用いて、直線偏波を円偏波に変換する偏波素子を試作し、その特性測定を行った結果、ほぼ設計どおりの特性を得ることに成功している。
理論的研究としては、原始惑星系円盤内でのダストの沈殿・成長の数値シミュレーションを行ない、ダストの沈殿・成長が観測されるSEDにどう反映するかを調べた。その結果、大きな粒子(微惑星)は短時間で形成されるが微小ダストが浮遊し続け、その結果、赤外電波域で観測される超過が百万年ほど持続することがわかった。つまり、数百万年と観測されている、ダスト放射持続時間は、円盤の寿命でも微惑星形成時間でもなく、微小ダストの浮遊時間を表すことがわかった(つまり、木星や土星は数百万年で作る必要はない)。また、ダストの沈殿・成長の動径方向の依存性を考慮すると、SEDから単純なモデルで推定する吸収係数の振動数のパワーが1程度、場合によっては負の値に観測されてしまうこともわかった。
このように、観測・理論それぞれ大きな成果があったが、それと同時に、両者をつきあわせる観点においても大きな進展があったと言える。

研究成果

• [文献書誌] Kitamura, Y., Momose, M., Yokogawa, S., Kawabe, R., Tamura, M., Ida, S.: "Investigation of the Physical Properties of Protoplanetary Disks around T Tauri Stars by a 1 Arcsecond Imaging Survey : Evolution and Diversity of the Disks in Their Accretion Stage"Astrophys.J.. 581. 357-380 (2002)
• [文献書誌] Kokubo, E., Ida, S.: "Formation of Protoplanet Systems and Diversity of Planetary Systems"Astrophys.J.. 581. 666-680 (2002)
• [文献書誌] Nagasawa, M., Ida, S., Tanaka, H.: "Excitation of Orbital Inclinations of Asteroids during Depletion of a Protoplanetary Disk : Dependence on the Disk Configuration"Icaros. 159. 322-327 (2002)
• [文献書誌] Tanaka, K.K., Tanaka, H., Nakazawa, K.: "Non-equilibrium Condensation in a Primordial Solar Nebula : Formation of Refractory Metal Nuggets"Icaros. 160. 197-207 (2002)
• [文献書誌] Nagasawa, M., Lin, D.N.C., Ida, S: "Eccentricity Evolution of Extrasolar Multiple Planetary Systems Due to the Depletion of Nascent Protostellar Disks"Astrophys.J.. 586. 1374-1393 (2003)
• [文献書誌] Tanaka, H., Ohtsuki, K., Daisaka, H: "A new formulation of the viscosity in planetary rings"Icaros. 161. 144-156 (2003)