減数分裂を制御する分子機構の研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11102002
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 山本 正幸 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40114706)
• 研究分担者: 山下 朗 東京大学, 遺伝子実験施設, 助手 (30312276) ; 杉本 亜砂子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80281715) ; 渡辺 嘉典 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (20212326)
• キーワード: 減数分裂 / 分裂酵母 / 線虫 / 転写因子 / cAMP / プロテインキナーゼ / RNA結合タンパク質 / 14-3-3タンパク質

研究概要

1.分裂酵母を対象とする研究において次の成果が得られた。(1)分裂酵母細胞では、多数の有性生殖関連遺伝子が、HMG型転写因子Ste11pにより支配されている。昨年度に、ste11自身の転写を制御するZnフィンガー型転写因子Rst2pの同定を報告した。今回、Rst2pの活性がcAMP依存性プロテインキナーゼによるリン酸化で負に制御されること、したがって、栄養条件に応じて変化する同キナーゼの活性はRst2pを介してste11の転写レベルを調節していることを明らかにした。(2)分裂酵母細胞で減数分裂開始を規定しているRNA結合タンパク質Mei2pは、Pat1キナーゼによりリン酸化されて不活化するが、その機構のひとつとして、リン酸化されたMei2pには14-3-3タンパク質が強固に結合し、RNAがMei2pに結合するのを阻害していることを明らかにした。さらにまた、リン酸化されたMei2pはプロテアソームによる分解を受けやすいことも不活化機構に寄与していることを見出した。
2.線虫を対象とする研究では以下の進展があった。(1)遺伝子機能破壊法であるRNAiを利用したスクリーニングにより同定された、減数分裂あるいは生殖細胞の分化に関わる20余りの遺伝子につき、欠失変異株の作製をシステマティックに進めている。その中でDNA結合能をもつと思われる遺伝子産物については機能の詳細な解析を進めている。(2)線虫のプロテインフォスファターゼPP4が正常な精子形成に必要なことを見出し、その作用機構を検討した。(3)染色体分配に影響を与える因子であるヒストンmRNA stem-lOOp結合タンパク質遺伝子を同定・解析した。

研究成果

• [文献書誌] Sato, M.: "The fission yeast meiotic regulator Mei2p undergoes nucleocytoplasmic shuttling"FEBS Letters. 499. 251-255 (2001)
• [文献書誌] Kitamura, K.: "Phosphorylation of Mei2 and Ste11 by Pat1 kinase inhibits sexual differentiation via ubiquitin proteolysis and 14-3-3 protein in fission yeast"Developmental Cell. 1. 389-399 (2001)
• [文献書誌] Sato, M.: "14-3-3 protein interferes with the binding of RNA to the phosphorylated form of fission yeast meiotic regulator Mei2p."Current Biology. 12. 141-145 (2002)
• [文献書誌] Higuchi, T.: "Protein kinase A regulates sexual development and gluconeogenesis through phosphorylation of the Zn finger transcriptional activator Rst2p in fission yeast"Molecular and Cellular Biology. 22. 1-11 (2002)
• [文献書誌] Nonaka, N.: "Recruitment of cohesin to heterochromatic regions by Swi6/HP1 in fission yeast"Nature Cell Biology. 4. 89-93 (2002)
• [文献書誌] Kodama, Y.: "The stem-loop binding protein CDL-1 is required for chromosome condensation, progression of cell death, and morphogenesis in Caenorhabditis elegans"Development. 129. 187-196 (2002)