研究概要 |
III-V族化合物半導体の中でも、周期律表の第2行に属するN(窒素)原子と他のV族原子を同時に含む混晶半導体(以下、窒化III-V族混晶と呼ぶ)は、極めて特異な性質を持つことが示されている。本研究の目的は、窒化III-V族混晶をMOCVD法で成長すること、およびそれらの物性を評価してデバイスの高性能化に応用することである。 サファイアの上につけるとGaNPがひどくポーラスになり、これを旨く使ったのがGaNPエピ結晶である。GaNPバッファーを使うと10^8cm^2程度まで転位密度が低下する。これは、GaNP結晶がまばら状に付き、その間で発生する転位を減らすためと考えられている。このバッファーを用いて、従来のサファイア基板上に形成されたLEDを大幅に上回る3%(365nm),6%(370nm)の外部量子効率がえられた。 これと同じ事をAINに適用しようとすると、これがなかなかうまく行かない。これは、AINが3次元の核発生をするためである。AINの成長にはAlN/Alという中間層を用いて転位が低減出来る。この転位低減層を用いて波長340nmのLEDを作製した。 一方、長波帯への応用の観点から、In(As, Sb)N材料を検討した。通常MOCVD成長で窒素源として使用されるNH_3は、他の原料との分解温度の違いから適当ではない。そのため、ジメチルヒドラジンを用いた成長を試み、予備実験として、GaAs基板上に立方晶GaN、InNの成長を確認した。この結果に基づき、InAsN系材料についてはInAsN/GaAs構造を用いることにより、その吸収端エネルギーがN組成増加とともに小さくなることをFTIRにより確認した。InSbN系材料については、Sb, Nの取り込まれ効率がAs, N以上に異なるため同じ条件化では難しい。
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