研究課題
短い間隔で繰り返し提示される同一の音(標準刺激)の中に標準刺激とは異なった聴覚的特性を持つ逸脱刺激がまれ(10〜15%)に挿入された場合に、逸脱刺激に特異的に認められる脳磁場成分がある。この成分はMMNmと呼ばれ、1)前注意的な、2)逸脱検出過程を反映した成分である、と考えられている。本研究ではMMNmを指標として日本語の音素体系では区別されない/la//ra/に対する脳磁場を測定し、子音部に対する母音部の持続時間の効果を検討した。被験者は右利き日本人話者11名であった。刺激としてカスケード型フォルマント合成器によって作成した刺激音セット/lait/と/rait/から先頭の110msと150msの区間を切り出した/la/と/ra/を刺激として用いた。第1フォルマント(F1、750Hz)の定常部は/la/、137ms、/ra/、89msであった。第2フォルマント(F2)、第3フォルマント(F3)の定常部は83msであった。F2は/la/が1280Hz、/ra/が960Hz、F3はそれぞれ3000Hz、1400Hzであった。/la/を標準刺激(85%)、/ra/を逸脱刺激(15%)として、刺激長の短いshortセッション(110ms)、長いlongセッション(150ms)を各被験者に行った。両セッションとも刺激間間隔(onset-to-onset)は600msであった。刺激提はイヤーチューブを介して両耳に行った。BTi社製の37チャンネルの脳磁場計測を用いて、両側の側頭部から脳磁場を同時記録した。左右両半球において、short条件ではMMNmが認められるが、long条件では認められなかった。従って、本結果は、temporal window内の統合時に母音部が子音部をマスクし、その結果、知覚された/la//ra/の差が減少したためと解釈可能である。
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