研究概要 |
本研究は縄文時代から弥生時代の遺跡から出土する動物遺存体に残存する遺伝子を分離・増幅して古代家畜を遺伝子面で復元し、古代家畜の遺伝的系統を現生のデータベースと比較することにより、家畜化の変遷を明らかにするものである。本年度は北海道内に持ち込まれた家畜について詳細に分析し、以下の成績を得た。 1)北海道内の縄文時代、続縄文時代、オホーツク文化期にかけて人と共に持ち込まれた犬について、各時代の遺跡から出土した犬の骨より古ミトコンドリア(mtA)DNAを分離・増幅して現生のデータベースと比較した。その結果オホーツク文化期の礼文島・浜中遺跡、弁天島貝塚、トーサッポロ貝塚から得られた古代犬のハプロタイプは現生犬のM5型に分類された。M5型はサハリン鈴谷貝塚でも多く出土しており、オホーツク文化期の古代犬には遺伝的にかなり均一であることが明らかとなった。 2)北海道内に持ち込まれたイノシシ属について古mtDNA分析を行った。その結果、縄文時代の遺跡から出土するイノシシ属の骨は多くが焼骨であり、古mtDNAは増幅できなかったが、続縄文時代の遺跡から出土した骨はニホンイノシシに分類され、人により本州から持ち込まれたものであった。オホーツク文化期の香深井A遺跡から出土したイノシシ属(通称:カラフトブタ)の骨42本について解析を行った処、分析ができた39個体から9種類のハプロタイプが検出され大きく4群(A,B,C,D)に分類された。A群はサハリン南貝塚から、またC群はロシア・ピシェーニエ遺跡から検出されており、沿海州のイノシシ属がサハリン経由で北海道にもたらされたことを強く示唆した。
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