CD36遺伝子エクソン4内のnt478C→T置換は日本や韓国で多いことが明らかにされているが、北京やヨーロッパでは見だされない。これは、CD36が朝鮮半島と日本との間の人類移動の良いマーカーになる可能性を示唆する。そこで、日本と韓国のnt478T変異が共通祖先に由来するかを検討した。変異者の家系調査で、nt478Tの近傍であるイントロン3における既知のマイクロサテライト、(TG)n repeat (A1〜A5の5種)、を確認した。次いで、プロモータ領域内のnt(-53)におけるG/T多型、3'-非翻訳領域内のnt2162におけるA/G多型を新たに見いだした。nt478T家系の検討から、nt478Tを含有するハプロタイプ(nt(-53):(TG)n repeat:nt478:nt 2164)として、T:A4:T:G、T:A4:T:A 、G:A4:T:Aの3種類が確認されたが、T:A4:T:Aハプロタイプが大部分を占めており本変異が比較的新しく出現したものであることが示唆された。nt478Tは家系調査では例外なくA4とリンクしており、また遺伝子頻度からもA4とのリンクが強く示唆されたが、韓国においても同様にnt478TがA4とリンクしていることを強く示唆する結果であった。このことは日本と韓国のnt478Tが共通する先祖に由来することを示している。nt478Tは南日本では韓国に近い高緯度で見出されるが、このことはnt478Tが朝鮮半島から南西日本を経て日本全土に拡散した集団のマーカーである可能性を示唆するように思われる。今後はハプロタイプ毎に韓国との関係を検討することにより、朝鮮半島に関連する人類の移動についてより詳細に検討できる可能性が示唆された。
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