研究概要 |
βサラセミア変異とβグロビン遺伝子群内の多型とに注目し、日本人の起源を検討した。昨年度日本人の北方起源説を検討するために、中国、韓国のサラセミアを解析し、中国起源と考えられる変異4種類を日本人に見いだした。また韓国・日本両集団のみで見られる3種の変異を同定した。その一つであるIVS-2nt1(G→A)変異にはcondon91のサイレント変異(GTC→GTT)が連鎖していることを見いだした。この多型の頻度を日本、韓国、タイ各集団で新たに確立したアレル特異的PCR法で決定した。その結果日本集団では698アレル中3アレルに見られたが、韓国集団1,110アレルおよびタイ集団470アレル中には見いだされなかった。このことからIVS-2nt1(G→A)変異は日本人の健常人に0.4%の頻度で存在する多型condon91(C→T)を持つβグロビン遺伝子に生じ、これが韓国へと広がったものと結論された。 日本人の南方起源説を検討するためにインドネシアにおけるβサラセミアの解析を行った。その結果は150アレル中codon26(G→A)48%、IVS-1nt5(G→C)25%、IVS-1nt1(G-T)7%、IVS-2nt654(C-T)5%、codons41,42-CTTT4%、codon15(G→A)2%、codon30(G→C)2%、-28 A→G 2%、unknown5%であった。この中で中国集団に見られず日本集団に見られる変異はcodon15(G→A)とIVS-1nt1(G→T)であった。前者に関しては前年度の解析により、日本とインドネシアで異なる起源を有するものと結論している。後者に関しては、現時点では日本とインドネシアで共通の起源を有するかどうかについては不明であり、ハプロタイプの決定による解析が必要である。
|