本研究では、まず、地域の特性を反映した地震活動モデルに基いて想定期間内における最大地動強さの確率分布の予測を行なった。地動強さとしては、地動加速度と震度の2つを考慮した。地域の地震活動性を表わす地震の年平均発生回数とマグニチュードの関係のモデルとしては上限及び下限マグニチュードを考慮した宇津のモデルを用い、エプスタイン-ロムニッツの方法に従って、想定期間内の最大地動の確率分布関数及び確率密度関数を導いた。宮城県沖の地震域を対象に、仙台における想定期間内の最大地動の確率的性質を検討した。次に、作用地震力と建物の耐震力をいずれも確率変数と考え、建物群の被害率の予測を行なった。大被害レベルの被害率予測は弾塑性地震応答におけるエネルギー一定則を用いて行なった。地動加速度と震度の2つの地動強さに対する被害率-地動強さの関係(Vulnerability Curve、被害率曲線)の予測式を導いた。1995年兵庫県南部地震における神戸市の木造被害の地域分布と、その地域の地動加速度の不整形地盤特性を考慮した予測分布に基いて、実被害による被害率曲線を求め、被害率曲線の予測式と比較した。また、過去の1981年濃尾地震、1923年関東地震、1948年福井地震、1978年宮城県沖地震などの大地震による木造建物の被害率曲線を調べ、木造建物群の耐震性能の時代による変化を検討した。木造建物群の耐震性は時代と共に増大していることが示された。また、地動強さ及び被害率データの精度向上が被害率曲線の特性に及ぼす影響を明らかにした。
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