阪神地区における倒壊した高架橋の地震時の破壊状況を検証し、地震時の鉛直成分の影響を把握することを目的として、具体的に阪神淡路大震災で倒壊した高架橋を対象としてモデル化し、鉛直水平2軸の準動的載荷実験を行った。 載荷実験としては、RC円断面橋脚がフーチングに固定された単柱供試体を用いて神戸海洋気象台およびJR鷹取駅の地震波による供試体の地震時の動的破壊挙動を生起させ、これをビデオシステムで撮影し記録した。高架橋の固有周期はひび割れ発生前において0.55秒と仮定した。本研究において得られた結果をまとめると次の通りとなる。 (1)JR鷹取駅のNS波又はEW波を作用させることにより、旧基準により設計されたRC円断面橋脚は、倒壊に至る様相を呈することが実験によって確認できた。また、倒壊に至る様相を動的映像としてビデオ画像に生起させることができ、RC橋脚が破壊していく過程を実時間で画面上において繰り返し観察することが可能となった。 (2)準動的地震応答載荷実験により、橋脚の地震応答挙動が作用地震波の加速度の大きさだけでなく、橋脚の固有周期と作用地震波のスペクトル特性との関係により大きく異なることを示すことができた。 (3)橋脚が鉛直方向に地震力が変動しながら水平方向の地震応答を生じる場合の、複雑な応答挙動を実験により示すことができた。橋脚に斜めひび割れが発生し耐力の低下が生じるまでは、地震応答は鉛直地震動の影響をほとんど受けなかったが、明確なせん断ひび割れが発生した後では、影響を受け極めて複雑な挙動を示した。 (4)JR鷹取駅のNS波が作用した場合、鉛直力が一定と変動の両方において橋脚は倒壊したが、EW波が作用した場合は鉛直地震動が同時に作用したときのみ倒壊した。NS波のときは両ケースとも応答変位が8/100rad.を越え、徐々に水平耐力が低下し鉛直力を支えきれずに倒壊に至った。一方、EW波で鉛直力が変動した場合、最大応答変位は4/100rad.程度であったが鉛直力を支えきれず急激に倒壊した。
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