多雪地域において学校体育館は緊急避難施設としての重要性が広く認識されている。しかし学校体育館は一般に大スパン構造でかつ軽量なので、相対的に積雪荷重の影響を受けやすく、積雪時の耐震安全性・信頼性を改めて議論する必要がある。これまでに兵庫県南部地震県南部地震による宝塚市内(35校)、阪神地区(78校)の学校体育館被害を実地調査し、またその一部の体育館について行なった耐震診断の結果をもとに、学校体育館被害の特徴と被害原因を分析した。一方、多雪地域の学校体育館の耐震設計・補強に当たって、積雪荷重と地震荷重を確率統計的立場から検討し、現状の耐震設計規準をもとに、重要度に応じてさらに高い信頼性を得るためには、地震荷重よりも積雪荷重の荷重係数を上げる方が効果が高いことを確認した。今年度はこれまでの学校体育館の耐震設計に関する以上の諸検討のまとめとして、(1)宝塚市および阪神地区の学校体育館について、地震入力を仲介パラメータとして地震被害と構造耐震指標(Is値)の関係を求めた。(2)北陸地方の多雪地域に建つ合計20の学校体育館について積雪時の耐震診断を行ない、得られたIs値を先の宝塚市および阪神地区のそれと比較し、設計積雪深ごとに多雪地域の学校体育館の地震被害レベルとその特徴を推定した。(3)多雪地域に建つ学校体育館の中から一般的に用いられている2種類の主架構について、兵庫県南部地震県南部地震海洋気象台(NS&UD)波を入力として弾塑性地震応答解析を実施した。その結果架構の一部が塑性化したことによる軒接合部の応力変形挙動について調べ、主架構の終局耐力に関して新しい知見を得た。
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