本研究では、地震の断層面や破壊域などの自動決定を念頭におき、3つのステップからなる自動解析システムを提案、構築した。3つのステップは、1)地震のメカニズム解の決定、2)断層面と断層長の決定、3)矩形断層でのモーメント解放量の時空間分布の決定、からなる。データは強震計波形記録を利用する。システムの動作確認には、過去の大地震の強震データを用いた。兵庫県南部地震では、ステップ1で、東西方向に圧縮軸をもつ横ずれ断層のメカニズムが決まる。ステップ2では、北東-南西走向の鉛直な面が、断層面として正しく選択される。同時に推定されるモーメント解放量分布で、顕著な値が、震源から淡路島側に約15km、神戸側に約35kmに現れ、断層長が約50kmであることを示す。ステップ3は、さらに、モーメント解放量の深さ分布を検出する。大きな解放量が震源の淡路島側隣の浅い部分にあるとともに、神戸側ではモーメントの解放が震源付近の深さにひろく起こったことがわかる。 システムは、現在、強震ネットや関西地震観測研究協議会のデータを用いて稼動している。北陸・近畿から中国地方の浅い小・中地震がステップ1を起動し、モーメントテンソル解が自動決定され、電子メールやホームページで公表されている。強震ネットについては、30以上の解が決定され、約70-80%がP波初動分布やフリージア計画で決定されている解と調和的している。関西地震観測研究協議会のデータを用いたシステムでは、強震計のトリガーによって配信される電子メールを受信することによってシステムが起動する、準リアルタイム対応も実現している。7月に発生した大阪湾の地震で自動決定されたメカニズム解は、北北東-南南西走向の逆断層で、強震ネットやフリージアで決定された解とも一致する。
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