1995年兵庫県南部地震において生じた震度7(激震)の地域(震災の帯)は、神戸市須磨区から西宮市にかけて長さ約20km、幅1kmで帯状に広がっている。地震後の地下構造探査により、六甲山から海側への基盤構造が深さ約1km程度の段差のある深い不整形地盤構造であることと、東西に長い「震災の帯」が不整形地盤端部に位置していることが判明した。 本研究では、2次元不整形堆積盆地モデルを設定し、盆地端部に配置させた3次元断層震源より射出する入力地震動による堆積盆地の地動応答を、いわゆる2.5次元境界要素法により評価する。2.5次元境界要素法を用いた主な理由として、1)FEMやFDMのように人工境界を設定する必要がない。2)境界線上の境界積分方程式を解析するので、3次元BEMより記憶容量が少なくて済む。3)地動応答に及ぼす断層震源の特性を分離して評価可能である。 移動断層震源による2次元盆地の地動速度応答を評価し、単純な地盤構造モデルでも「震災の帯」をある程度再現できることを示した。盆地端部断面形状モデルをモデルA : 傾斜地層境界が45°をなす台形型、モデルB : 盆地底部ではほぼ直角の直角型、モデルC : 傾斜地層境界が135°の逆台形型の3つのモデルを想定した。数値解析から、盆地内強震地動分布に及ぼす盆地端部形状の影響は、盆地端部サイズより長い入射波長の長周期地震動の場合小さいが、短周期領域で顕著であり、最大応答値が3者のモデル間で、それぞれ、約600mも離れた地点で生ずる場合もあることを示し、盆地端部の地層境界形状が盆地内最大地震応答分布に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。
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