NOSはP450とそのヘム鉄の配位子場が非常によくにているため、P450と類似のEPRシグナルを酸化型で示す。酸化型ヘム鉄に結合したNOはEPR吸収を示さないが、極低温で可視光照射をすると鉄からNOが光解離し、その解離したNOがヘムの近辺に補足され特異なEPR吸収を示すことを、すでに阪大の堀らが報告している。NOSの場合、酵素自体がNOを発生するため、ヘム鉄とNOの関係を調べることは非常に重要である。酸化型NOSのNO複合体に極低温で可視光を照射して、そのEPRシグナルの消長を調べた。NOSに基質の結合していない状態では、光解離されたNOは4.2Kにおいてもヘム鉄の遠位領域でかなり自由に動き回り、その大部分が酸化型ヘム鉄と再結合する。基質あるいは生成物を結合したNOS中では、光解離されたNOのほとんどは、ヘムのすぐ近くにある基質あるいは生成物のグアニヂドあるいはウレイド基に補足されることが明らかとなった。この結果は、NOSの反応において生じたNOが一度シトルリンのウレイド基に補足されることを示唆している。 25℃でNOSの1回転の反応を測定した場合、基質であるArgが約50ミリ秒の半減期で対数的に減少し、その減少に伴いOHArgの増大が観測できた。OHArgは約100ミリ秒で最大となり、それに続く減少に伴いCitが生成してきた。この実験によりはじめてOHArgがNOSの反応の中間代謝物であることが実証された。反応迅速停止法により求められた速度定数はアレニウスの式に従う温度依存性を示した。ArgとOHArgの水酸化反応の活性化エネルギーとOHArgの解離の活性化エネルギーは12-15kcal/molとほぼ等しいが、最終生成物Citの解離の活性化エネルギーは25kcal/molと他の段階の2倍近い。これはNOSの反応においては、Citの解離が律速段階になることを意味する。
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