研究概要 |
ラングミュア-ブロジェット(LB)法は分子レベルでの配向・配列制御並びに超薄膜の作製が可能であることから電極界面上に高秩序構造を構築でき、構造規制に基づく分子機能の発現・制御が期待できる。LB膜は層状の構造であり、高効率な分子機能を発現するためにはLB膜層間での電子移動反応の理解が重要となる。そこで本研究では、LB膜-電極界面やLB膜層間での電子移動速度について調べるためルテニウム錯体を有する高分子(Ru)LB膜電極のACインピーダンス法による検討を試みた。 1.RuLB膜の累積層数効果 異なる層数累積したRuLB膜のCole-Coleプロットの円弧の形は累積層数と共に大きくなり、電極反応抵抗が増大した。また、低周波数領域ではバルク溶液中にレドックス種が存在しないためレドックス種の拡散現象を示す傾き45°の直線領域(ワールブルグ領域)は見られない。Randles等価回路を用いてfittingして得られた電極反応抵抗(Rp)及び二重層容量(Cdl)と累積層数の関係から各累積層数でのRpからLB膜-電極界面及びLB膜層間の電子移動速度を求めた。Cdlは電極界面の二重層容量直列した形であり、炭化水素鎖の容量成分のため累積層数と共に減少した。 2.RuLB膜の電極電位依存性 RuLB膜電極の各電極電位でのCole-Coleプロットは電極電位を0.18Vから1.1Vまでアノードシフトしていくと円弧が生じ、小さくなる。これはカソード側では電子移動速度が小さく、また酸化還元電位付近で電子移動速度が増大したことを示している。Rp,Cdlと電極電位の関係からRpは酸化還元電位付近で最小値を示し、これはルテニウム錯体の酸化体と還元体の存在比が等しいとき交換電流密度が最大となるためである。一方、Cdlは最大値を示した。これはRuLB膜の電極反応に基づく充電電流が酸化還元付近で最大であることを示している。以上、ACインピーダンス法によりレドックス高分子LB膜電極の膜構造中の各電子移動過程を検討でき、構造規制電極の評価に有効であることが明かとなった。
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