研究課題/領域番号 |
11118219
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北森 武彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (60214821)
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研究分担者 |
火原 彰秀 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (30312995)
久本 秀明 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (00286642)
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キーワード | フェムト秒表面熱レンズ分光法 / 過渡反射法 / 超高速電荷移動 / 電極溶液界面 / 非平衡電子 |
研究概要 |
我々は光反射配置のフェムト秒過渡反射法を用いて、これまで観測された例のない超高速な電荷移動過程を見いだしてきた。この過程は、フェムト秒光パルスにより電極内部に生成した非平衡状態の高エネルギー電子が関与していると考えられる。より詳細な検討のためには、電子を受容するような化学種等で電極を修飾する等の実験が有効である。しかし、これまでの光反射配置では、高い表面精度が求められるために化学修飾電極等の測定が困難であった。そこで本研究では、高い表面精度が必要なく、電極表面での電子移動・エネルギー移動過程などを高感度に測定できる新規な分光分析手法としてフェムト秒表面熱レンズ分光法を開発した。 フェムト秒表面熱レンズ分光法では、フェムト秒時間分解を得るためにポンプープローブ法を用いている。本手法では、過渡反射法など従来の時間分解分光法と異なり、ポンプ光とプローブ光の間に数十ミクロンのピント差を与え制御する必要がある。このためのレンズ対を設計して導入した。また、時間分解能を向上させるために群速度分散を補償するプリズム対も導入した。以上の工夫により、350フェムト秒の時間分解で電極溶液界面を計測できる分光法を開発できた。表面精度のよくない高分子基板上の単結晶金薄膜から、従来の反射法以上の信号雑音比で非平衡状態の電子を観測できた。従来法では、溶液の本質的な揺らぎが原因で溶液中の光路長は5mm以下にする必要があり実験上の制約となっていたが、本手法では、溶液中の光路長を40mm以上としても問題なく電極表面を計測できた。測定感度についても、従来の反射法と比較して2桁から3桁ほど向上した。本研究で開発に成功したフェムト秒表面熱レンズ分光法は、様々な形態の電極に適用でき、電極上の電荷移動・エネルギー移動を高感度に計測できるため我々の発見した超高速電荷移動過程の詳細を検討する上でおおきな利点をもつ手法である。
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