研究概要 |
本研究の目的は「表面構造のよく規定された」電極/溶液界面における単純なレドックス反応の電子移動過程の速度と、電極表面の構造との関係を明らかにすることであり、以下のような結果を得た。 1.[Co(phen)_3]F_2を用い、裸のPt(111)電極において0.1MKF,KClあるいはKBrを支持電解質にした場合の、[Co(phen)_3]^<3+>+e=[Co(phen)_3]^<2+>の式量速度定数k^<0'>の値はアニオンに依存し、F^->Cl^->Br^-の順にk^<0'>の値が低下している。すなわちアニオンの特異吸着性が強くなるほど、あるいはイオン半径が大きくなるほど速度定数の値が小さくなる。 2.SCN^-を単分子層として吸着被覆させたPt(111)電極においては、k^<0'>の値は電解質のアニオンの種類によらず、ほぼ一定で、裸のPt(111)電極における値より大きい。 3.SCN^-、CN^-、およびI^-単分子吸着層で被覆したものおよび裸のPt(111),Pt(110),Pt(100)の単結晶電極を用いて、同じレドックス系について得た式量速度定数の値は、[Fe(CN)_6]^<3-/4->の場合と異なり、k^<0'>に対する面指数の影響は見られず、被覆層によってCN^->SCN^-≒bare>I^-の順に低下する。CN^-やSCN^-の吸着層が電極と反応体との間の電子的相互作用を高める効果を有している可能性を示している。 4.[Co(bpy)_3]^<3+/2+>についても同様な結果が得られた。 5.関連の研究では、多結晶金電極表面におけるピリジンおよびピリジンカルボン酸の吸着構造を赤外分光法により明らかにし、また高配向性グラファイトおよび水銀電極表面におけるビオロゲン類の吸着構造を明らかにした。
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