溶媒として2-プロパノールを用い、界面活性剤としてポリピロリドンを用いた。スチレンと界面活性剤と重合開始)を混合し、70℃で一日かくはんした。遠心分離および水中の再分散により、ポリスチレンラテックスの懸濁液を得た。懸濁液にアニリンを入れて化学重合すると、ポリスチレン粒子はポリアニリンによって被覆された。遠心分離および再分散を繰り返すことにより、ポリアニリン被覆ラテックス(PALX)を単離した。粒子は直径2.3μmの単分散に近い球状粒子で、安定なコロイドを形成した。コロイドの可視吸収スペクトルは電解重合ポリアニリン膜と同じカチオンラジカルの状態(電子導伝体)であった。コロイドの塩酸中での微小電極ボルタモグラムは酸化波のみ現れ、電解重合ポリアニリン膜よりも0.2V負にシフトした。本粒子のnは1.2×10^8であった。A/D変換機で電流値を8.1msの間に256点積算した。拡散律速となる0.75に電位を印加してから数秒後の電流応答を測定した。ノイズの方が大きいため、この曲線から目的としている一粒子の電流の変化を見ることが出来ない。そこでフーリエ変換をしてみた。実際にはフーリエ変換した結果にシグナルが見えてくるよう、電流の取得時間をさまざま変化させて測定した。定常状態電流が0.13nAを示す溶液では電流のスペクトルには13-16Hzにバンド(1)が、0.24nAの定常電流を示す溶液では20-30Hzにバンド(2)があった。1粒子の反応時間をt(周波数をf)、その電流をI(=4nFcDr)とすれば、電気量はneであるから、f=1/t=I/q=4FcDr/eとなる。つまり、周波数と濃度は比例するはずである。バンド(2)の周波数は、濃度が2倍であるバンド(1)の周波数の2倍となっている。よりわかりやすくするため、60Hzなどの雑音を取り除いたデータを逆フーリエ変換した。約15Hzの周期的な電流の波が見られる。これが一粒子の電流であると考えられる。
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