研究課題/領域番号 |
11118257
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
米村 弘明 九州大学, 大学院・工学研究科, 講師 (40220769)
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研究分担者 |
秋山 毅 九州大学, 大学院・工学研究科, 助手 (20304751)
山田 淳 九州大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30136551)
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キーワード | 光電流 / 修飾電極 / 磁場効果 / 希釈磁性半導体 / 量子サイズ効果 / 半導体超微粒子 / フラーレン / 3重項ラジカル対 |
研究概要 |
昨年度報告したCds超微粒子修飾電極における磁場効果(Δ=-3%)はポルフィリン-ビオローゲン修飾電極における磁場効果(Δ=15%:磁場による光電流の変化量)に比較して小さい。そこで、本年度は磁場効果の増大を図るために、II-VII族半導体のカチオンの部分を磁性イオンに置換した混晶、すなわち希薄磁性半導体に注目した。具体的には、CdSにMN^<2+>を含ませた希薄磁性半導体の超微粒子を用いて、光電流に対する磁場効果を検討した。また、励起3重項の量子収率が高く光物性が注目されているC_<60>を光増感剤として用い、磁場による影響の増大も図った。具体的には、フラーレン(C_<60>)-フェノチアジン(PH)連結化合物を電極に固定し、光電流に対する磁場効果について試みた。具体的には以下の研究を行った。 1.Cd_<1-X>Mn_XS超微粒子の作成方法はCdS超微粒子と同様にAOT逆ミセルを用いて調整した。超微粒子をSAMを用いて金電極に固定して修飾電極を作成した。光照射を行うことで安定なアノード方向の光電流を観測できた。修飾電極に磁場印加(0.76T)すると、光電流の減少が観測できた。磁場による光電流の変化率(Δ)は-8%となった。これはCdS超微粒子の場合(-3%)より約2.5倍程度磁場の影響が大きくなった。この結果はスピンを持つMn^<2+>のために、光電流に及ぼす磁場の影響が増大されたと考えられる。また、超微粒子化してないCd_<1-X>Mn_XS修飾電極ではアノード方向の光電流は観測されたが、磁場効果は観測されなかった。従って、超微粒子化(量子サイズ効果)は光電流に対する磁場効果を観測するための必要条件である事がわかった。 2.最初に、C_<60>-PH連結化合物のベンゾニトリル溶液をNd-YAGレーザー(532nm)で光励起して、過渡吸収スペクトル及び時間分解EPRを測定した。過渡吸収スペクトル測定では700nm付近の吸収(C_<60>の励起3重項(^3C_<60>^*))は消失し、新たに520nmの吸収ピーク(PH^+・)と600nm以上の吸収(C_<60>^-・)が観測された。さらに、ラジカル対に帰属される吸収の減衰速度定数(kd;s^<-1>)は磁場を加えると小さくなり、0.2T以上で一定値になった。電荷再結合反応がマーカス理論のトップ領域にあるにもかかわらず、この電荷分離状態は長寿命(130ns:0T)であった。これは逆電子移動反応がスピン多重度に支配されているためと考えられる。時間分解EPRの結果も上記の事を支持した。に、C_<60>-PH連結化合物と両親媒性分子の混合LB膜をITO透明電極に一層固定して修飾電極を作成した。修飾電極を光照射すると、安定なアノード方向の光電流が観測された。しかしながら、現在のところ光電流に対する明確な磁場効果は観測されていなかった。
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