研究概要 |
光電変換素子としての分子素子の研究には、分子素子単分子膜と電極とのナノメートル領域光電変換機能を調べることが重要な手がかりとなる。そこで、D-σ-A型分子素子である我々独自のPNX分子に[1]に坂口ら(Jpn. J. App. Phys. , 38, 3908-3911, 1999)によって提案されたPhotoconductive AFM(PC-AFM)を適用してナノメートル領域光電変換特性の測定を試みた。Au(111)基板は超高真空電子ビーム蒸着法でマイカへき開面上に金を蒸着、アニールして作成した。LB法に用いる直前に水素フレームアニールクエンチ処理により金原子の再配列と周辺大気による表面の吸着汚染物質の除去を行った。これにより広い原子テラス(50×5Onm以上)を持ち親水性の極めてよいAu(111)基板を得た。この上にPNX分子の高品質の単分子膜を積層した。変調レーザー光(630nm)によってAu(111)基板上に発生したエバネッセント光がD-σ-A分子素子に照射されたとき、金コートされた導電性カンチレバーとAu(111)基板との間を流れる電流を電流―電圧変換増幅し、ロックインアンプによって変調周波数に対して位相検波し、光電流を測定する装置を開発した。PC-AFMは接触抵抗が制御でき高さ情報と電気特性が独立して取り出せるというAFM I-V法の利点に加え、エバネッセント光の届く範囲が数十nm以下のために非常に限定した範囲に光を照射できる特徴を有し、分子素子からの光電気応答を測定するには極めて強力な方法であると思われる。さらにこの方法で光合成反応中心(RC)タンパク分子の高品質LB膜のような超分子素子のナノメートル領域の光電変換特性を測定するため、このRCタンパク単分子膜を作成する新規な電界印加LB法と基板水平引き上げ法とを組合わせた装置を開発した。[1]三箇山毅,松岡宏和,上原赫,杉本晃,水野一彦,井上直人、電気学会論文誌 A-118,1435-1439-(1998).
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