ランタニド金属原子をフラーレンの炭素ケージの中に入れた金属内包フラーレンは、一種のスーパーアトムとして特徴付けることができ、空のフラーレンと同様に化学修飾できるかどうかは、極めて重要な研究課題である。空フラーレンの炭素求核試薬による化学修飾法を利用し、ランタニド金属内包フラーレンの反応性を検討する。炭素求核試薬による化学修飾は、付加体の新しい機能発現の興味と共に、フラーレン骨格そのものの性質を基本的に解明するのに非常に有効な武器となっている。平成9、10年度の研究成果より、La@C82は、種々の電子移動を伴う炭素求核試薬に対して、高反応性を有することが期待される。カルバニオン等の反応による官能基化したランタニド金属内包フラーレン誘導体を合成し、その電子的特性をレドックス電位、ESRスペクトルの測定により明らかにした。さらに、金属ドーピングによるフラーレンの電子構造の変化による新しい電子的特性の発現機構の解明した。 さらに、これら二金属内包フラーレンの化学修飾による誘導体を合成し、内包金属の回転制御による幅広い機能性を検討する。炭素試薬、カルバニオンやカルベン付加による金属内包フラーレン上での炭素結合形成反応を試みる。官能基化La2@C80の構造解析によりフラーレンケージの対称性を議論し、さらに、金属内包フラーレンにおける環電流に関する情報を、外付け基のNMRデータより検討した。 金属内包フラーレンの安定な誘導体合成の成功は、化学修飾されたスーパーアトムとしてのLiやHe疑似原子の誘導体が有機化学的に合成できることになり、今までにない新規な化学の展開が期待できる。このように、ランタニド金属原子が一個及び二個内包されたフラーレンの分子変換は、空のフラーレンにない面白い"物"をつくり、水溶性金属内包フラーレンや種々の機能性を有する高分子化金属内包フラーレン等の合成や生理活性研究へと発展させることができ、今までにない新規な化学の展開が期待できる。
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