研究概要 |
キラル遷移金属錯体を高分子メディアに導入し、従来の系では達成し得なかった、「不斉触媒反応における新現象」を発見することを目的として研究をおこなった。(1)囲い込み効果:キラルな配位子から解離したロジウムイオンは、それ自身が高いヒドロホルミル化活性を示し、また、副反応を触媒するため、特に配位子の溶解度が低いヘキサンなどの非極性溶媒中では、基質であるオレフィンの異性化などの副反応やエナンチオ選択性の低下が見られる。このことは、適用できる反応溶媒を拡張する上での問題点となっていた。本研究では、このようなロジウムイオンの解離を、剛直な高分子メディアによって阻止し、非極性溶媒中での高分子担持触媒の利用を可能にした。すなわち、キラルホスフィンホスファイト配位子(R,S)-BINAPHOSのロジウム錯体は、ヘキサン中では配位子の低い溶解性のため遊離したロジウムによって触媒されたと考えられるラセミ体のアルデヒドが得られることがあったが、この配位子を高分子担持することでこの問題点が解決された。(2)疑似溶媒効果:不斉ヒドロホルミル化反応は、ベンゼン、トルエンなどの芳香族溶媒系で効率良く進行する。しかし、これらの溶媒を用いずに反応を行えれば、環境付加やコストなど様々な面でのメリットがある。本研究では、キラルなロジウム錯体を担持したポリスチレンが溶媒のように振る舞い、高分子担持触媒を用いて無溶媒系で高活性高選択的不斉ヒドロホルミル化が達成された。
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