研究概要 |
本研究は,シリルチオケトンと炭素,リン,イオウ,酸素などの種々の求核剤との反応を行うことにより,1)付加の位置選択性:求核剤の種類と攻撃位置との関係;2)炭素原子への付加体における1,2-アニオニック転位によるインターエレメント結合形成の可能性,を明らかにすることを目的として行った. 1.ベンゾイルトリアルキルシリルチオケトンとリチウムジエチルホスファイトとの反応 昨年度に行った,ベンゾイルトリアルキルシリルチオケトンとリチウムジエチルホスファイトとの反応の反応機構を明らかにするために,シリルチオケトンに対し0.9当量のジエチルホスファイトの存在下0.1当量のリチウムジエチルホスファイトとを反応させたところ,S-付加体のみが得られた.従って,ホスファイトの攻撃がイオウでおこり,その後,反応条件によりホスホリル基のイオウ原子から炭素原子への転位,そしてシリル基の炭素原子からイオウ原子への転位が伴うことが明らかになった. 2.Brook転位とthia-Brook転位の速度の比較 これまでに知られていない,thia-Brookが実際に起こることを確認するために,ジフェニルシリルメタンチオールを合成し,MeLiと反応させたところ-98℃でも転位が進行することが判明した.さらに,対応するBrook転位との速度の比較を行うために,CDCl_3中塩基としてDBUを用いて^1H NMRで反応を追跡したところ,thia-Brook転位はBrook転位に比べて約5倍遅いことがわかった.
|