研究概要 |
ルテニウムのホスホラン錯体[Cp(CO)_2Ru{P(OC_6H_3MeO)_2}]を新規に合成し、X線結晶構造解析を含めて、錯体の同定を行った。相当する鉄ホスホラン錯体との比較より、Ru錯体の方がM^<δ+>-P^<δ->の分極が大きいことを明らかにした。Ruホスホラン錯体の温度可変^<31>P NMRスペクトルの解析を行うことにより、メタラホスホランとしては初めて、リン周りでのBerry擬回転活性化パラメーター(ΔH^‡=42.1kJmol^<-1>,ΔS^‡=-91.1Jmol^<-1>K^<-1>,ΔG^‡=73.1kJmol^<-1>)を決定した。 また、[Cp(CO)_2Fe{P(OPh)_3}]^+とEt_4NFとの反応により、Fを置換基とする鉄ホスホラン、Cp(CO)_2Fe(PF_4)およびCp(CO)_2Fe{PF_3(OPh)}が生成することを明らかにした。さらに、これらの錯体のBerry擬回転エネルギー障壁が、遷移金属を含めたリン上の置換基のapicophilicityで説明できることを示した。 ルテニウムホスホラン[Cp(CO)_2Ru{P(OC_6H_4Z)_2}](Z=NMe,O)にルイス塩基であるLiN(^iPr)_2を反応させ、その後Melを反応させることにより、ホスホランフラグメントがRuからCp環へ転位した錯体(C_5H_4{P(OC_6H_4Z)_2}(CO)_2RuMeが生成することを見出した。さらに、この反応を-30℃で行うと、リン上の置換基の立体配置の異なる(1つのNがアピカル位、1つのOがエカトリアル位を占める)ホスホラン転位生成物が観測され、それが徐々にN-エカトリアル-O-アピカル異性体へ変換して行くという前例の無い反応を見出した。
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