昨年度までの本特定領域研究において、研究代表者らはジメチルアミノピリジンと2つのキレート性側鎖とからなる対称的構造をもった人工配位子を種々合成した。なかでもジメチルアミノピリジンとシステアミンからなる化合物は亜鉛に対して良好な結合性を示した。 今年度はこの新たな展開として、HIV-EP1、Sp1、ファルネシルトランスフェラーゼなど、がんやエイズに関わる各種亜鉛蛋白質の阻害をめざし、メチオニンの構造を基本としたキレート性側鎖をピリジンの2位および6位に導入した新規含硫黄配位子を設計し、合成した。 さらに、既知のファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の構造をもとに、酵素中の亜鉛部位を標的とした新規阻害剤として、ピリジン環の4位に置換ベンゼンを持つ化合物をデザインし、Stilleクロスカップリング反応を基軸とした合成法の基礎を開拓した。 合成した配位子について電位差滴定、ESRスペクトル、X線結晶構造解析などを行い、ジメチルアミノ基が配位子の性質に与える影響、配位子のプロトン化の様子、結晶および溶液中における構造に関する知見が得られた。 これらは今後の配位子のデザインや評価において非常に有用な情報であるといえる。
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