NMRによる抗エイズウイルス活性発現メカニズムの解明 ウイルスタンパクのカチオン集中部位モデルとして、オリゴリジンおよびポリリジン(PL)を用い、硫酸化ドデシルラミナリペンタオシド(L5C12S)と種々の比率で混合し、lH-および13C-NMRの測定を行った。硫酸基アニオンとアンモニウムカチオンのイオン比(L5C12S/PL)が1付近を中心に、粘稠な油状ないしはゲル状の物質の生成が確認され、NMRでリジンのε位が不連続にシフトし非常にブロードに検出された。このゲル様物質は硫酸基とアミノ基両者のイオン相互作用の結果により生じるポリイオンコンプレックスと考えることができ、硫酸化アルキルオリゴ糖がウイルスタンパクと相互作用をすることが示された。硫酸化度が低下すると、相互作用も弱くなりゲル由来のピークはよりシャープに観測され、抗HIV活性との良い相関が得られた。 デンドリマー分子上での規則的糖鎖配列構造の構築 これまでの検討の結果、抗エイズウイルス活性発現に糖鎖上の硫酸基の存在とその密度が密接に関与していることが分かってきた。そこで、リジンデンドリマーの末端に糖鎖を規則的に導入することで、高い生理活性を持つオリゴ糖鎖の高分子集合体の構築を試みた。別途第3世代リジンデンドリマーを合成しそのアミノ基末端に、ボラン・ピリジン錯体を用いる還元アミノ化反応により、オリゴ糖鎖を導入した。条件を制御することにより、1アミノ基あたり最大2分子のオリゴ糖を導入できることが分かった。また、2段階で反応を進めることで各末端に2種類のオリゴ糖鎖を対にして導入できることも分かり、新規の糖分子集合体を構築することが出来た。導入されたオリゴ糖の硫酸化を試みたところ、これまでオリゴ糖鎖単独で硫酸化を行った場合とは異なり、1級の水酸基(グルコース骨格6位)への選択的硫酸化は起こらず、2級水酸基と同等の反応性を示した。
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