研究概要 |
我々はシアリルルイス糖鎖アナログであるシアリルラクトサミンを分枝鎖に持つ來膜多糖を生産する溶血性連鎖球菌Streptococcus agalactiaeに注目し、この多糖の生産性を改良することを目的として糖鎖の生合成に関与する18の遺伝子を含む20kb以上のDNA断片を大腸菌にクローン化し、そのDNA塩基配列を決定した。類縁菌株の糖鎖合成酵素遺伝子群の構造と比較し、これらのうちcpsIaRが制御遺伝子、cpsIaEがグルコース転移酵素遺伝子cpsIaGがβ-1,4-ガラクトース転移酵素、cpsIaI及びcpsIaJがそれぞれN-アセチルグルコサミン転移酵素遺伝子、β-1,3-ガラクトース転移酵素遺伝子と推定した。大腸菌で生産したこれらの遺伝子産物を用い、ラジオアイソトープ標識した糖や蛍光性人工基質を用いてこれらの活性を同定した。一方、転写単位について昨年に続いてさらに詳しく調べたところ、cpsIaRは向きが違う単独の転写単位であることが判明した。一方、糖鎖合成酵素遺伝子群はcpsIaA〜cpsIaL遺伝子以外にシアル酸合成酵素遺伝子を含むneuが遺伝子群、さらに下流の機能未知のORF、その下流のung遺伝子を含む領域が18kヌクレオチドにも及ぶ巨大なmRNAとして発現していることがわかった。転写終結シグナルはung遺伝子の下流に1カ所のみ存在し、また機能未知のORF上流にも新たな転写開始シグナルを見出した。一方、これらの遺伝子のさらに下流にはDNA修復酵素と相同性が高い遺伝子群が見出され、機能的にも明らかに違う転写単位と考えられる。
|