我々は漆カブレと漆の脂質成分であるウルシオール誘導体の構造相関、漆カブレ防止に関わるトレランス(免疫寛容)の誘導を研究している。そのためにウルシオールーマルトオリゴ糖配糖体(G4〜G7)を、ウルシオールとパーアセチルマルトオリゴ等にBF_3触媒を用いる配糖体により収率よく合成した。ウルシオールは空気中の酸素で酸化され易く水に不溶であるが合成したウルシオールーマルトオリゴ糖配糖体は空気中の酸素に対して安定で、マルトテトラオース(G4)以上のウルシオール配糖体は水溶性であった。そこでウルシオールーマルトテトラオース(G4)配糖体をモルモットに静脈注射し、更にウルシオールで感作処置、続いて惹起反応による漆アレルギー試験を検討した。その結果、前処置としてウルシオールーマルトテトラオース(G4)配糖体を投与しないモルモットは漆にカブレが生じたが、ウルシオールーマルトテトラオース(G4)配糖体を注射したモルモットはウルシオールで惹起反応を行っても漆カブレは検出されず、漆アレルギー反応が抑制された。このことからウルシオールーマルトテトラオース(G4)配糖体はウルシオールの抗原に対して特異的にトレランスが誘導されることが認められた。次にモルモットの皮膚上でのウルシオールーマルトオリゴ糖(G4-G7)配糖体の加水分解反応性を調べた。モルモットの腹部にパッチテストの方法で合成したマルトオリゴ糖(G4〜G7)配糖体を貼付し、48時間後の皮膚の状況を観察した。ウルシオールを貼付した箇所の皮膚に紅斑、浮腫が認められたがウルシオールーマルトオリゴ糖(G4〜G7)配糖体を貼付した箇所はいずれも変化が無かった。一方、グリコシダーゼによるウルシオール配糖体の加水分解性を調べたところグルコース配糖体は加水分解が起こり、ウルシオールが確認されたがマルトオリゴ糖配糖体はグリコシダーゼ酵素による加水分解を受けないことが分かった。このことからウルシオールーマルトオリゴ糖(G4〜G7)配糖体は皮膚上での加水分解は起きない比較的安定な化合物であることが分かった。
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