昨年度に実施した研究を継続し、化学的手法、固相合成、酵素反応を組み合わせ、ムチン型糖ペプチドの全く新しい"新次元合成戦略"を構築することを目的として研究を展開した。平成11年度は、シアル酸の結合したシアロムチン型糖ペプチドの合成戦略を実証することができた。 具体的には、前年度までに固相合成されたThr(Gal-GalNAc)残基を有するHIVプロテアーゼに対する阻害活性が報告されているヘキサペプチド(Ac-Thr-Val-Ser-Phe-Asn-Phe-OH)のスレオニン残基に二糖(Gal-GalNAc)が結合した糖ペプチドアナローグを基質に、CMP-シアル酸を糖供与体にシアリルトランスフェラーゼを作用させ、定量的に目的とする人工シアロムチン型糖ペプチドの合成に成功した。構造は、アミノ酸分析、MALDI-TOF MSによって確認した。また、結合位置を確認する目的でシアリダーゼによる加水分解反応が定量的に進行することも確認した。 平成9年度より3年間にわたって実施した本研究は、当初の計画通りに、化学的手法、固相合成、酵素反応を組み合わせた、ムチン型糖ペプチドの"新次元合成戦略"を構築することができ、今後様々な応用が可能になった。
|