研究概要 |
シアロアドヘジンは、脾臓やリンパ節の一部のマクロファージに発現されている動物レクチンである。その糖鎖結合活性は証明されているものの、シアロアドヘジンを介してどのような細胞が結合するのか、またどのような生理機能をもつのかに関しては不明な点が多い。シアロアドヘジン陽性マクロファージの存在する脾臓やリンパ節は抗体の二次反応、すなわち効率の良い抗体産生を司る臓器である。抗体産生に関わるリンパ球をシアロアドヘジンが特異的に結合し、抗体産生の効率を上げている可能性を検討した。その結果以下の2点が明らかとなった。 (1)細胞障害性T細胞や、ヘルパーT前駆細胞はシアロアドヘジンを介して接着しないこと、一方抗体産生細胞であるB細胞や、抗体産生を増強するヘルパーT・2型細胞はシアロアドヘジンを介して接着する可能性があることを示した。従って両者がシアロアドヘジンに仲介されてマクロファージ上に集積し、抗体産生の効率を上げている可能性がある。 (2)シアロアドヘジンのリガンド糖鎖を140分子含むスーパー糖鎖分子を作製した。この分子を利用してリンパ球上のシアロアドヘジンの糖鎖結合能を定量的に調べることが可能になった(Hashimoto et al., J. Biochem., 123, 468-478)。種々の二次リンパ臓器からマクロファージを調節し、その糖鎖結合能を調べたところ、シアロアドヘジンを高発現するマクロファージ亜群が存在することを見いだした。またこのシアロアドヘジン高発現マクロファージは、従来の報告にないような組織分布を示した。このマクロファージ亜群はリンパ球を強固に結合することによって、抗体産生の効率化に寄与している可能性がある。
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