本研究では、これまでのニアフィールド顕微鏡の発想を根本から転換し、プローブを用いずに、光の場を物質の形状、密度分布など、他の物理量に変換して検出する、新しいニアフィールド顕微鏡の原理を考案するとともに、実際に装置を試作し、高速現象の観察に応用することを目的として研究を進めてきた。この手法の特徴は、これまでのニアフィールド光学顕微鏡とは異り、観察像を得るためにプローブを走査する必要がないため、生きた生物など移動する試料の観察や高速現象の観察が可能となる。本年度は、感光材料にウレタン-ウレア共重合体を用いて、実際に生物試料の観察を試みた。 試料として、生きたゾウリムシを用い、ゾウリムシのべん毛の動きを高分解能で観察することを試みた。ゾウリムシを含んだ水滴をウレタン-ウレア共重合体薄膜上に滴下し、レーザー光を照射した。ゾウリムシのべん毛の動きの軌跡が、薄膜上に記録でき、高分解能でかつ動きのある試料を観察可能であることを示した。
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